村上春樹の短編小説『納屋を焼く』を巨匠イ・チャンドン監督が映画化した『バーニング 劇場版』。
アカデミー賞の外国語映画賞では最終候補に残れなかったものの、注目作には違いない。来週2月1日(金)から日本でも公開される。
『バーニング 劇場版』
(原作:村上春樹『螢・納屋を約・その他の短編』(新潮文庫)/2018年/韓国/148分)
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2019年2月1日(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー
詳しいあらすじや公開情報等は公式HPをご覧ください。
映画あらすじ
運送会社のアルバイトをしているジョンス(ユ・アイン)
小説家を目指しながらアルバイト生活を送っているが、街角でセールの広告モデルを務める女性に呼び止められる。
それは幼なじみのヘミ(チョン・ジョンソ)だった―
↑整形してキレイになってるという設定w
パントマイムを習っているというヘミは、アフリカ旅行のためにお金を貯めているところだった。
ジョンスはヘミがアフリカ旅行で留守中、彼女の自宅にいる猫の世話を引き受けることに。そして2人は肉体関係を持つ。
現在、ジョンスの父親は傷害事件を起こして裁判中。母親はとうの昔に家を出ていき、姉も数年前に結婚していった。よってジョンスは畜産業を営む父に代わって実家で牛の世話をし、不在にしているヘミのアパートを訪れて猫の世話もしていた。
半月後、ようやくヘミが帰国。ジョンスが空港に迎えに行くと、ヘミは見知らぬ青年を連れていた。
ケニアで知り合ったというベン(スティーブン・ユァン)
それは優雅で洗練されていながら、どこか不敵な表情を浮かべている謎めいた男だった。
ジョンスとは住む世界が違うベン
高級車を乗り回す彼は、洒落たマンションの部屋で自らキッチンに立ち、ジョンスとヘミにパスタ料理をふるまう。
後日、今度はベンとヘミがジョンスの実家にやってきた。
そこはベンが住む都会の一等地と違い、北朝鮮のすぐ隣にある貧しい田舎だ。ジョンスとヘミが幼少時代を過ごした場所でもある。
ここでワインを空け、大麻を吸う3人。
服を脱いで踊り出すヘミ
そのときベンはジョンスに自分の秘められた“趣味”を打ち明ける。
それは古いビニールハウスを燃やすこと。そろそろまた燃やす頃だというベン。
この日を境にヘミの姿が消えた。
ジョンスがベンを訪ねると新しい“彼女”の姿が―
必死にヘミを探すジョンス
彼女は一体どこへ消えたのか―!?
*****
本作に「この国にはギャッツビーみたいなヤツが多い」というセリフが出てくる。
実は私自身も韓国で同じようなことを感じ、友だちに聞いたことがある。
「彼はなんであんなに金持ちなの?」と。
本作のベンを見ていて、正体不明の金持ちのことを思い出した。
そして映画は、原作となった村上春樹の小説『納屋を焼く』(新潮文庫)とは設定からして違う。
というか、30ページほどの短い小説をよくここまで膨らませたなーというのが第一印象。
小説には畜産業を営む父も、家出しちゃった母親も出てこないし、そもそも主人公は悲惨な境遇ではない。
大まかなストーリーは小説もここまでで、NHKで放送された特集ドラマ『バーニング』もヘミが行方不明になったところで終わっている。
『バーニング 劇場版』ではこの続きも描かれる。ここからはイ・チャンドン監督のオリジナルで、痛々しいほど韓国社会の光と闇を映し出している。
ただし、“衝撃のラスト”とか“想像を絶する”という売り文句を信じて劇場に行くと拍子抜けするかも。
正直言って、そこまで衝撃じゃないし、想像を絶するってほどではなかったように思う。
30ページの短い小説が映画では148分とかなり長く、むしろそっちのほうが衝撃だった。もはや村上作品とは別モノになっている気がする。
それにしても、こうした韓国映画に出てくる新人女優が毎回すごい。野心を隠さないというか、どこか挑発的で
「監督、なんなら私、脱ぎますけど」と言わんばかりの目つき。
ヒロイン演じるチョン・ジョンソもそうした雰囲気を漂わせ、「私、なんでもやります!」みたいな根性や覚悟が透けて見える。
一方、俳優は俳優で、こうした映画のセックスシーンでお尻を出すことは珍しくなくなった気がするw
NHKの特集ドラマではさすがにユ・アインのお尻の割れ目はカットされていた。
『バーニング』というタイトルはこれ以上ないぐらいピッタリだけど、尺の長さからして疲れる作品だった。
緊張感ありすぎて、特に『おっさんずラブ』(テレビ朝日)みたいなドラマのあとに見ると罪悪感さえ覚えるw
オススメ度 ★★☆☆☆
螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫) 原作本です。 |