先週の『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』に続き、今週も『出国 造られた工作員』が日本で公開される。
どちらも同じ工作員もので実話を基にしているけど、ファン・ジョンミン主演の『工作』がヒットしたのに対し、『出国』は韓国でも静かに上映されて幕を閉じた。
現政権にとっても歓迎されない映画だろうし、上映館が少なかったのも納得。
『出国 造られた工作員』
(原題:『出国』/2018年/韓国/105分)
©D.seeD 디씨드
2019年7月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにてロードショー
詳しいあらすじや公開情報等は公式HPをご覧ください。
映画あらすじ
経済学者のオ・ヨンミン(イ・ボムス)は反政府運動をしていたことから韓国に戻ることができず、亡命先の西ドイツにいた。
ところが西ドイツでも評価されない日々。
嘆いていたヨンミンはある人物から「北朝鮮で大学教授として働かないか」と勧誘される。
北朝鮮に行けば今よりいい暮らしができるかもしれない。そう考えたヨンミンは妻ウンスク(パク・チュミ)の反対を押し切り、家族で北朝鮮へと向かう。
しかし待っていたのは大学教授としての日々ではなく、工作員としての過酷な訓練だった。
そしてついに工作員として指令を受け、再び家族を連れて西ドイツへ。
空港で逃亡を試みたヨンミンだったが…。
北朝鮮の工作員に妻と娘を人質に取られてしまう
家族を取り戻すため必死に奔走するヨンミン。
ムヒョク(ヨン・ウジン)の手を借りるが―
各国の情報局は北朝鮮のスパイを捕まえるためヨンミンを利用するのだった。
*****
『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』では、「90年代の大統領選で保守派は北朝鮮を利用してこんなことをしていたんですよー」と国民にアピールし、工作員と北朝鮮側の絆も描かれていたけど、本作は真逆。
だまされて行った北朝鮮は地獄であり、家族まで人質に取られたという話。
親北派の現政権から歓迎されるはずもなく、少ない上映館で興行的に苦戦した。
そして、やはりこれは映画。オ・ギルナム博士の手記『失われた娘たちよ! ヘウォン・ギュウォン』をモチーフにしていても、かなり脚色されているのではないか。
父親の一瞬の選択により、家族は反対しながらも一緒に北朝鮮へ。報道によると過酷な収容所生活を強いられている。
実話に基づいているのは一部分だけで、あとの父親像こそ“造られた”もののような気がしてならない。
もし私が妻や娘だったら、この父親を激しく恨んだと思う。
オススメ度 ★☆☆☆☆
隣国への足跡 ソウル在住35年 日本人記者が追った日韓歴史事件簿 「地上の楽園」は「地獄」だった!? |