韓国での公開中、怒りで爆発しそうな観客がスマートウォッチ等で心拍数を測る“ストレス計測チャレンジ”が流行ったという。
そんな『ソウルの春』がいよいよ日本でも公開される。
『ソウルの春』(2023年/韓国/142分)
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2024年8月23日(金)より公開!
詳しいあらすじや公開情報等は公式HPをご覧ください。
映画あらすじ
1979年10月26日、独裁者といわれた朴正熙(パク・チョンヒ)大統領が側近に暗殺され、国中に衝撃が走る。
暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)
この混乱に乗じて、新たな独裁者の座を狙う。
秘密組織「ハナ会」の将校たち
盟友のノ・テゴン(パク・ヘジュン)も加担する。
それを警戒する参謀総長チョン・サンホ(イ・ソンミン)
チョン・ドゥグァンの暴走を懸念する参謀総長は、信頼できるイ・テシンをそばに置く。
首都警備司令官イ・テシン(チョン・ウソン)
こうした状況からチョン・ドゥグァンはクーデターを12月12日に決行することに。
罠にハマったイ・テシン
反乱を鎮圧したい人と、勝ち馬に乗りたい人
チェ・ハンギュ大統領(チョン・ドンファン)も…
軍の暴走を止められず。
イ・テシンはますます不利な状況に置かれる―。
*****
ネタバレはしないが、史実を知っている方なら内容は容易に想像つくかと。観たあとのストレスは半端ない。
そりゃ、心拍数も上がるだろう…って思う。
まず、『KCIA 南山の部長たち』で描かれていたように朴正熙大統領が暗殺される。
そして本作『ソウルの春』で全斗煥(チョン・ドゥファン)が権力を握る。これには盧泰愚(ノ・テウ)元大統領も加担。
その翌年、民主化を求めた多くの国民が犠牲になる5.18の光州事件が発生。『タクシー運転手~約束は海を越えて~』へと続く。
これは史実で、全斗煥による12.12軍事クーデターや5.18光州事件では多くの血が流れた。とても民主的な解決とは程遠く、国民の憎悪の対象になったのは当然のことだと思う。
ならば、全斗煥政権下の韓国は暗黒の時代だったのか?というと、当時を韓国ソウルで過ごした人は「決して暗黒ではなかった」という。
それまで続いていた夜間外出禁止令は解除され、経済が大きく発展した時代でもあるからだ。
プロスポーツも盛んになり、ソウル五輪を招致したのも全斗煥だった。
私は知らなかったが、ソウルの中心部を一周する地下鉄2号線が開通したのもこの時代だったそうだ。
とはいえ、こうした功績を口にすることはタブーとされているし、今でも全斗煥は韓国では犯罪者であり、虐殺者だ。
特筆すべきは、イ・ソンミンが演じているチョン・サンホ参謀総長。
『KCIA 南山の部長たち』を見ればわかるが、朴正熙大統領を暗殺した直後、キム部長(実際はキム・ジェギュ)がこの参謀総長を車に乗せて陸軍へと向かう。
参謀総長はこの暗殺事件とはなんら関わりがないのに運悪く巻き込まれたことで、全斗煥に暗殺事件の共犯者にされたのだ。
ちなみに、『KCIA 南山の部長たち』ではソ・ヒョヌが全斗煥役を演じ、最後に金庫を開けている。
また、本作には2022年12月に亡くなられた俳優ヨム・ドンホンさんがハナ会の1人として出演している。
私にとっては舞台『キサラギ』での演技が印象深く、思い出の俳優でもある。本作が遺作になったようだ。
本作は昨年11月に公開され、1,185万人の観客を動員し、昨年の観客動員数1位に輝いた。今年の観客数も合算すると1,313万人もの観客が観たことになる。
全斗煥にまったく顔が似ていないファン・ジョンミン
顔は似ていなくとも、その演技は憑依に近いものがあり、韓国人をゾッとさせたようだ。俳優ってすごい。
個人的には年を重ねるごとにチョン・ウソンが素敵になっていて本当に驚かされる。
オススメ度 ★★★★☆
KCIA 南山の部長たち(字幕版) 観ておくと話が繋がる! タクシー運転手 ~約束は海を越えて~(字幕版) |