韓国で起きた歴史的事件を描いた『KCIA 南山の部長たち』が来週から日本でも公開される。
朴正熙元大統領の暗殺事件。大統領を暗殺した側近をイ・ビョンホンが演じている。
『KCIA 南山の部長たち』
(原題:『南山の部長たち』/2019年/韓国/114分)
© 2020 SHOWBOX, HIVE MEDIA CORP AND GEMSTONE PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.
2021年1月22日(金)シネマート新宿ほか 全国ロードショー
詳しいあらすじや公開情報等は公式HPをご覧ください。
映画あらすじ
1961年5月、軍事クーデターにより政権を握った朴正熙大統領(イ・ソンミン)。
その大統領の長期政権を支えたのは、韓国初の情報機関“中央情報部(KCIA)”。
大統領に次ぐ強大な権限を武器にした中央情報部の歴代部長は、庁舎の所在地から“南山の部長”と呼ばれ、人々から恐れられていた。
1979年10月、中央情報部の部長キム・ギュピョン(イ・ビョンホン)が宴席で大統領を射殺した。
キム・ギュピョンはその日になぜ大統領を殺したのか―?
さかのぼること40日前―。アメリカの下院議会聴聞会で韓国大統領の腐敗が告発された。
証言したのはKCIA元部長パク・ヨンガク(クァク・ドウォン)
アメリカに亡命したヨンガクは朴正熙大統領に関する回顧録も執筆中だった。
当然、朴正熙大統領はこれに大激怒。
中央情報部のキム部長に事態の収集を命じる
キム部長はアメリカに渡り、かつての友人で裏切り者のヨンガクに接触。回顧録の件を上手く片付けたつもりだった。
一方、キム部長はクァク警護室長(イ・ヒジュン)と激しく対立
クァク警護室長は年上のキム部長に無礼な振る舞いをするだけでなく、反政府デモについても大統領に過激な進言をする。
「デモ隊など殺してしまえばいい」と―
自らの力を見せつけるかのように、やたら戦車を走らせたがるクァク警護室長。大統領はキム部長よりクァク警護室長を信頼するように。
大統領に忠誠を誓う側近たちだったが―
やがて自らの運命をも狂わせていく。
*****
原作はベストセラーとなったノンフィクション小説。
史実に基づいているとはいえ、映画にはフィクションも存分に含まれているため、役名は実在の人物とは違っている。
- 大統領を暗殺した金載圭(キム・ジェギュ)
→キム・ギュピョン(イ・ビョンホン) - 警護室長の車智澈(チャ・ジチョル)
→クァク・サンチョン(イ・ヒジュン) - 元KCIA部長の金炯旭(キム・ヨンウク)
→パク・ヨンガク(クァク・ドウォン)
朴正熙大統領の暗殺事件といえば、酒の席で射殺した側近の金載圭(キム・ジェギュ)ばかりに注目してしまうが、本作ではアメリカに亡命していたという元KCIA部長のパク・ヨンガク(実名は金炯旭)の存在を深く描いている。
この人物は、朴正熙大統領が殺害された1979年10月にフランスのパリで行方不明に。その真偽は長いこと分からなかったらしい。
ところが2005年、真相究明委員会の調査により、パリで銃殺されたことが公表される。指示したのが金載圭であったことも。
そういったことも引っくるめて映画を見ると、虚しい気持ちになる。
特に印象的だったのが、男たちが靴を履いていないことに気づいて靴下をじっと見つめるシーン。
パク・ヨンガクとキム・ギュピョンの姿が最後になって重なるという。
閣下に忠誠を尽くしたけど結局は報われなかった二人。どこかに靴を脱ぎ捨ててきたことに気づかなかったのだろう。
権力の中枢にいた人たちの結末としてはあまりに悲しい。
デボラ・シム(キム・ソジン)がいう。
「アメリカ大使館はいい場所にある。空気が違う。
風水師の話では青瓦台が韓国で最悪の土地だそうよ。そこの主は早死する。ならば、主の座から降ろすのが本人のため」
そして最後に描かれる漁夫の利。
「大統領の椅子に座って早死するぐらいなら、私腹を肥やしておこう」
こういう人が最後まで生き残るという皮肉。
韓国ではコロナ禍になる前の昨年1月に公開。475万人も動員しており、今も人々の関心の高さが伺える。
オススメ度 ★★★★☆
大統領の理髪師 [DVD] 本作の冒頭にも“大統領の理髪”シーンが見られる。 ユゴ [DVD] |