楽しみにていした1本がいよいよ今週末から日本で公開。ソン・ガンホ主演の『弁護人』。
故ノ・ムヒョン元大統領が若き弁護士だった頃、人権派の弁護士に転身するきっかけとなった釜林事件をモチーフにした作品。韓国では観客動員数1,000万人を突破した。
激動の時代を描いているように思えて、その“激動”がつい最近まで続いていたことに愕然とする。
『弁護人』(2013年/韓国/127分)
(C)2013 Next Entertainment World & Withus Film Co. Ltd. All Rights Reserved.
11月12日(土)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー
詳しいあらすじや公開情報等は公式HPをご覧ください。
映画あらすじ
高卒で弁護士になったソン・ウソク(ソン・ガンホ)
学歴もコネもないから、まだ誰も手をつけていなかった不動産登記業務に目をつけ、釜山一の税務弁護士となる。
ある日、馴染みのクッパ屋のスネ(キム・ヨンエ)が訪れる
息子ジヌ(イム・シワン)が公安当局に逮捕されたという。
自分の専門分野ではないが拘置所へ向かうウソク
だが、まともに面会すらさせてもらえない
ようやく会えたジヌは痩せ細り、拷問された痕跡が―
1980年代の韓国では民主化ムードが高まり、学生運動が活発化していたが、全斗煥が軍を掌握。民主化運動を推進していた政治家たちが逮捕されていった。
そして1981年に釜林事件が起こる。全斗煥政権の統治基盤確保のため、釜山地域の民主勢力を抹殺しようと、学生や社会人ら19人を令状もないまま不法に逮捕したのだ。
彼らは反国家団体の構成員とされ、国家保安法違反などの罪をねつ造されるのだった。
本作のジヌも20日以上に渡って監禁され、拷問を受ける
ウソクはジヌの無罪を訴えるが、相手は“国家権力”
出来レースの裁判が始まるが―
当時、税務会計弁護士として活躍していた盧武鉉元大統領はこの事件をきっかけに政治や社会問題への関りを深めていったという。
*****
試写会中、悲惨な出来事があった。
ジヌ(シワン)がもっとも残酷な拷問を受けていたシーンで機械が故障し、映像が乱れてしまったのだ。
そこで一度、映像はストップ。機械を再起動して、あらためて続きを見ることになったんだけど、シーンが少し戻ってしまい、シワンの拷問シーンをまた1から見る羽目に。
ただでさえ目をそむけたくなるような拷問の場面なのに、二度も見ることになろうとは。
本作の尺が長く感じられたのは、そのせいもあると思う。
ストーリーは勧善懲悪にはなっておらず、見たあとモヤモヤが残った。
というのも、1981年に起きた釜林事件が描かれているから。
民主化への布石なんだろうけど、そこに当時の韓国の経済力や北朝鮮の脅威なんかも絡んでいて、人権が重視される今とは明らかに違っている。
ウソク弁護士も時流に乗って金儲けに走っていたほうがはるかに楽チンだったはず。
ここで民主化に目覚め、政治家を志すなんて…。
あえていばらの道を選んだのね。
誰にでもできることじゃないし、人格者だったことが伺える。
で、モヤモヤした理由は、裁判の結果。
結局、逮捕された被害者たちは1983年12月に刑執行停止で釈放される。
…が、99年に再審を請求しても棄却されてしまう
その後、再抗告し、一部の容疑のみ無罪とされるが、全員に無罪が宣告されたのは2014年9月―。最初に逮捕されてから無実が認められるのに、なんと33年もかかったわけ。
本人はもちろん家族にとってもどれだけ長い闘いだったことか。
1981年当時、実際にこの釜林事件の弁護を引き受けていた盧武鉉元大統領はすでにこの世の人ではなくなっていたが、待ちに待った判決に天国で何を思ったか。
そんなことを想像した。
てか、今は朴槿惠大統領の進退のほうが気になっているかもしれないが。
オススメ度 ★★★★☆
殺人の追憶(字幕版) こちらは迷宮入りとなった華城連続殺人事件。 |