普段、韓国映画のことばかりだけど、今回は珍しく日本の映画『さまよえ記憶』のことを書いておきたい。
わずか24分の短編映画なのに、いろいろな思いが交錯し、心を持っていかれた。
『さまよえ記憶』(2023年/24分/日本)
2023年8月11日(金)より全国順次公開
詳しいあらすじや公開情報等は公式HPをご覧ください。
映画あらすじ
行方不明の息子を探し続ける詩織(永夏子)
息子・隆(野口聡太)の失踪から3年になろうとしていた。
そんなとき、彼女は情報質屋(竹原芳子)と出会う。
“知りたい情報”と、“それに見合った価値のある記憶”を交換できるというのだ。
詩織にとって、隆の居場所は喉から手が出るほど欲しい。
一方、そんな詩織を見守る父・英樹(モロ師岡)は複雑な思いを抱くのだった。
詩織は愛する隆に会いたい気持ちを抑えきれず、大事な記憶を預けるが―。
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脚本を書いたのも野口雄大監督!
NHK大河ドラマ『どうする家康』の演出も手掛けている。
その監督の元に、演技派俳優のモロ師岡や個性派の竹原芳子が集結。行方不明になった息子を探し続ける母親役を演じた永夏子を盛り立てている。
どれほど幸せな思い出であっても、時として人を苦しめることがある。
たくさんの笑顔で満たされていたはずなのに、今となっては「忘れてしまいたい」「忘れたほうがいい」記憶になっている。
誰でも一度ぐらい経験したことがあるのではないか。
たどり着いた結末は、一緒に観ていた友だちらと思いきり解釈が分かれた。果たしてハッピーエンドといえるのかどうか。
誰かにとってはハッピーエンドかもしれないが、誰かにとっては残酷な結末かもしれない。
人の生き方、考え方によって、このラストの受け止め方は全然違ってくる。また、劇場に再度足を運んだ方によれば、2回目で物語の見え方が全然違ったという。
自分の記憶こそ怪しいが、韓国のイ・チャンドン監督作品『シークレット・サンシャイン』や『ポエトリー アグネスの詩』が思い出された。
悲しいけれど、かけがえのない日々を覚えていることが必ずしも幸せとは限らない。24分の短編映画だったが、その余韻がいつまでも続いた。
オススメ度 ★★★★☆
ペパーミント・キャンディー デジタルリマスター版(字幕版) イ・チャンドン監督作品。この映画もまた、記憶に苦しむ男の話。 |