正直、あまり期待しないで観ていたら、思いのほか秀作だった。映画館で観ても損した気持ちにはならない。むしろ感動すると思う。
私は終盤、涙が止まらなくなった。
『手紙と線路と小さな奇跡』は今週8日(金)から日本で公開される。今、終盤のシーンを思い出してもグッとこみ上げるものがあり、目頭が熱くなる。
『手紙と線路と小さな奇跡』
(原題:『奇跡』/2021年/韓国/117分)
© 2021 LOTTE ENTERTAINMENT & BLOSSOM PICTURES CO., LTD. All Rights Reserved.
2022年4月29日(金)、シネマート新宿ほか順次公開
詳しいあらすじや公開情報等は公式HPをご覧ください。
映画あらすじ
舞台となるのは80年代の韓国・慶尚北道 奉化郡 小川面 汾川里という田舎の村。
チョン・ジュンギョン(パク・ジョンミン)
彼は姉のチョン・ボギョン(イ・スギョン)と仲良し
そしてジュンギョンは手紙を書いていた-
大統領府に送る54通目の手紙だった。
彼らの住む村には道路がない-
冗談のような話だが、道がなく、線路しか通っていないのだ。
出かけるときはトンネルと鉄橋を3つずつ越えて「承富駅」まで線路を歩くしかない。ジュンギョンの学校の最寄駅は「栄州駅」で、家から学校に行くにも2時間以上かかる。
客車には時刻表があるが、貨物列車は時間が分からず、線路を歩行中に亡くなった人もいる。
住民が安全に移動できるよう簡易駅を作ってほしい。
それは住民たちの悲願だった-
けど利用客が少なくて閉鎖された駅もある。新しい駅の開設など無理な相談で、人々は隣の「承富駅」を守るのが精一杯だった。住民たちは「承富駅」がなくならないよう、交代で乗る努力をする。
一方、ジュンギョンに協力するのはラヒ(イム・ユナ)
彼女はジュンギョンのクラスメイトで、自称“女神(ミューズ)”。
ラヒの力添えもあって、やがてジュンギョンの願いは叶い、大統領府から手紙が届く。
だが、機関士の父テユン(イ・ソンミン)は-
父の態度にジュンギョンは戸惑いを隠せなかった-。
*****
とにかくストーリー展開に驚いた。
いろいろな思いや秘密が徐々に明らかになっていく。
ジュンギョンが駅を作りたい本当の理由。
それは映画の中で明かされる。「えっ…、そういうことだったのか」と驚いた。
序盤からの短いシーンにもいろいろと伏線があったことに気付かされ、思い返すと鳥肌が立つ。
ボーッとしていると見逃してしまうかもしれないけど、家族は秘密を抱えたまま生きていくことになる。
悪人は出てこなくて、皆、良心的な人たちばかり。けど、人の思いは空回りし、時に傷つけ、傷つけられることも。悪気はなくとも家族を悲しませてしまう。
不器用な家族が心を通わせていくシーン
本当に泣ける。
映画の中で描かれる人の成長や旅立ちの様子が素晴らしい。
この村はあまりにも生活が不便なので、新駅を作る許可はもらえたが-、その予算がない!
ならば、自分たちで駅を作ろう!ということに。
駅の名前は当初、「元谷(ウォンゴク)」にしようとするが京畿道に同名の駅があることから断念。
それで「ここも元谷、川向うも元谷」、アチコチに元谷があるということで「両元(ヤンウォン)」に決定。
ついに駅が完成するが、結局、韓国初の私設駅である「両元駅」は24年後の2012年に閉鎖されたそうで、けれど翌年には観光列車が停車するようになった。
今では村に道路もでき、住民の往来は以前より便利になったという。
この映画、韓国では昨年9月中旬に公開された。
ちょうど秋夕の1週間前ぐらいに公開され、71万人を動員。家族で見て楽しめ、そして感動できる作品だと思う。特に大作ではないけど、興行的には大成功といえるのでは。
オススメ度 ★★★★☆
Be With You 〜いま、会いにゆきます(字幕版) 同じイ・ジャンフン監督の作品。 |