今年、日本で公開される韓国映画の一発目が『22年目の記憶』。
今週末から公開されるけど、初・韓国映画としてはちょっぴり残念な気がしなくもない。
『22年目の記憶』
(原題:『私の独裁者』 2014年/韓国/128分)
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2019年1月5日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他にてロードショー
詳しいあらすじや公開情報等は公式HPをご覧ください。
映画あらすじ
売れない役者ソングン(ソル・ギョング)
舞台で子供テシクにカッコいい姿を見せようと思っても上手くいかず、反対にテシクをガッカリさせてしまう。
そんな1972年、南北共同声明が発表され、韓国は初の南北首脳会談に備えて、秘密裏にオーディションを行う。
北の最高指導者である金日成の代役を選ぶというものだったが、思いがけずソングンが受かる。
「この役は誰にも渡さない」と日夜厳しい訓練をくなしたソングンは、やがて金日成が乗り移ったように演じられるように。
しかし、代役が日の目を見ることはなかった。
22年後―。
年老いた父ソングンと息子テシク(パク・ヘイル)
父によって人生を狂わされたテシクは詐欺師になっていた。
テシクは借金返済のために、自らを金日成と信じ込む父親と同居することに。
そして再び南北首脳会談のニュースが流れ、ついに中央情報部から迎えが来る。
ソングンに「金日成として大統領に会うように」と。事は台本どおりに進む予定だったが―。
*****
わずか38万人という観客動員数が、本作を物語っている。
そもそもこれはフィクション。
最初の南北会談前に「リハーサルがあった」という記事を見た監督が「それは一体どんなリハーサルだったのか?」と興味を持ち、想像を膨らませたもの。
しかも、10分で映画の構成を思いついたと資料には書かれている。
序盤、息子の姿で恥をかく父親の姿には胸が痛んだ。
ハッキリ言って、ソングンという男がなぜ自分に一番向いていない役者の道を選んだか謎だったけど。
それなのに大統領が引くぐらいの憑依型の演技とか、それを身につけるまでの拷問に近い訓練とか。
監督が思いついた構成があまりに突拍子なさすぎて、途中から置いていかれた感が否めない。
そうした状況で最後に描かれる父と子の絆。
入っていけなかった、その世界観に。
そもそも、ソル・ギョングが金日成役を熱演したとして、金日成といえば1994年に亡くなった北の初代最高指導者。私たち日本人のうち何割が金日成の人物像を熟知しているかも疑問。
例えば、ゲーリー・オールドマン主演の『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は、チャーチル首相の人物像をよく知らなくとも楽しめる。
スクリーンで見るその姿は最初からゲーリー・オールドマンではなくチャーチル首相であって、しかも第二次世界大戦時の内幕を描いているから緊張感でいっぱい。
チャーチル首相の人物像を知らないからシラける…なんてことはない。
むしろ、脚色があろうとも、スクリーンで目にした人物像そのものがチャーチル首相なんだろうと素直に思える。
一方、本作はソングンというダメ役者が途中で金日成になりきるというもの。
この変化を見せられても、「ソル・ギョングの素晴らしい演技力!」とは思えなかった。
フィクションでも全然いいんだけど、説得力が感じられなかったってことかなー。
そもそも自分の父親がこんなふうになったら、一緒に病院に行って医師に相談すると思うし。
去年、南北首脳会談が実現したから4年前に韓国で公開された作品を日本でも公開するのかもしれないけど、たぶん見る人の感性で評価が真っ二つに分かれそう。
この作品に共感できる人が見れば、親子の情が描かれるシーンではそれなりの感動を覚えるだろうけど、私のように途中で引いちゃうと陳腐にしか見えない。
オススメ度 ★★☆☆☆
隣国への足跡 ソウル在住35年 日本人記者が追った日韓歴史事件簿 お隣の韓国だけでなく、北朝鮮のことも分かります。 |