「言葉は民族の精神であり、文字は民族の命です」
このセリフにあるように、言葉ってアイデンティティにも大きく関わる。
そんなことを思った『マルモイ ことばあつめ』。
コロナ禍で公開延期となっていたが、来週末から日本でも公開される。香港の言論が脅かされるこの時期での公開って、妙なタイミングね。
『マルモイ ことばあつめ』
(2019年/韓国/135分)
©2019 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
2020年7月10日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
詳しいあらすじや公開情報等は公式HPをご覧ください。
映画あらすじ
舞台は1940年代の京城(日本統治時代の韓国・ソウル)。
この時代、朝鮮半島では自国の言語や名前を日本式へと変えられていた。
劇場の仕事をクビになったパンス(ユ・ヘジン)
彼はある日、息子の授業料を払うためジョンファン(ユン・ゲサン)のバッグを盗む。
ジョンファンは朝鮮語学会の代表だった。親日派の父親を持ち、裕福な家庭で育ったが、失われていく朝鮮語(韓国語)を守るため、父には秘密で朝鮮語の辞書を作ろうとしていた。
各地の方言などあらゆる言葉を集めていたとき、パンスにバッグを盗まれたのだ。
一方、バッグを盗んだことがきっかけでジョンファンと出会ったパンスは朝鮮語学会で雑用係として働くことに。
読み書きができないパンス
ジョンファンはそんなパンスに母国語を教える。
最初は、カネにならない“言葉”を命がけで集めることを不思議に思っていたパンスだが、ジョンファンの辞書作りを通して、やがて自分の話す母国の言葉の大切さを知る。
全国の言葉や方言を集める“マルモイ(ことばあつめ)”。
その作業を共にするパンス
彼らの熱い思いは実を結ぶのか―!?
*****
生きていく上で大切なものはたくさんある。
家族、友だち、仕事、夢、お金…と、いろいろあるけど、そうだ!
“言葉”も人と人とをつなぐ大切なものであると、あらためて思った。
辞書作りというと日本では『舟を編む』を思い浮かべちゃうけど、本作の舞台は日本統治下の朝鮮半島。普通に辞書を作るのとはワケが違う。それこそ命がけだったことが伺える。
映画はフィクションだけど、韓国初の国語辞典の原稿を示す言葉として、また“辞典”を意味する言葉として“マルモイ”がある。
映画はフィクションでも、日本の監視を避けながらの辞書作りは実際に行われていたわけだ。
一見、地味な作品に思われがちだけど、昨年1月に公開された本作は281万人の観客を動員。
ハン・ソッキュとソル・ギョングが共演した『悪の偶像』や、クォン・サンウ主演の『ラブ・アゲイン 2度目のプロポーズ』よりもずっと支持されたといえる。
たんぽぽやホットクといった何気ない言葉一つも意味深い。
困難なことを成し遂げようとする人々の姿を目にし、「1人の10歩より、10人の1歩」という言葉が胸に響く。
余談だけど、もう何年も前に『朝鮮語辞典』を買おうと思い、編集部に電話したことがある。7,770円(税別)もする辞典だ。
スマホみたいに、買ってすぐに新しいのが出たらたまらないと思い、新バージョンが出たりしないか確認しておきたかった。
すると、編集部からは「当分どころか数年、その予定はない」と教えられた。
「辞書を出すと決まったら、そこから軽く5年以上はかかります」と。
「現時点で新たに出版する予定はまだないので、最低でもあと5年は新たに刊行されることはないです」
そういう回答を得たので安心して買ったが、同時に「1冊の辞典を出すのにそんなに年数がかかるのか」と驚いたりもした。
本当に頭の下がる思いがするし、大切に使わねば!
オススメ度 ★★★☆☆
舟を編む コチラも興味深かった。 |