芸能ニュースを見たあとだと“純烈”と間違えそうだけど、原題は『朴烈』。←烈しか合ってないw
アナキストの朴烈(パク・ヨル)と金子文子の獄中での闘いを描いた『金子文子と朴烈』が来週末から日本でも公開される。
『金子文子と朴烈』
(C)2017, CINEWORLD & MEGABOX JOONGANG PLUS M , ALL RIGHTS RESERVED
2019年2月16日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
詳しいあらすじや公開情報等は公式HPをご覧ください。
映画あらすじ
1923年、東京―。
社会主義者たちが集う店で働く金子文子(チェ・ヒソ)
彼女は「犬ころ」という詩に心を奪われる。
詩を書いたのは朝鮮人アナキストの朴烈(イ・ジェフン)
出会ってすぐにふたりは意気投合
互いの強靭な意志と孤独さに共鳴し、唯一無二の同志となり、共に生きることを決めるのだった。
ふたりの発案により、日本人や在日朝鮮人による「不逞社」が結成される。
ところが同年9月1日、関東大震災が日本列島を襲い、ふたりの運命は大きなうねりに巻き込まれていく。
日本政府は人々の不安を鎮めるため、朝鮮人や社会主義者らを無差別の検束することに。朴烈と文子も検束された。
ふたりは社会を変えるため、そして自分たちの誇りを守るために獄中で闘うことを決意する。
ふたりの闘いは韓国にも広まり―
多くの支持者を得ると同時に、日本の内閣を混乱に陥れていた。
国家を根底から揺るがす歴史的な裁判
この裁判に身を投じていくふたりには、過酷な運命が待ち受けていた―。
*****
感想から先に言うと、ちょっと残念だった。素材的にはもっと面白い作品になったはずなのに。129分の尺はもっと長く感じられ、途中で退屈した。
韓国での観客動員数は235万人。数字だけ見るとヒットしたように見えるけど、制作陣からするとどうなんだろ。
というのも、本作が韓国で公開されたのは2017年6月末。特に驚異となるような公開作品はなく、ライバル視されたのは駄作で自滅した『リアル』ぐらい。
そんな状況の中、本作は公開わずか5日で100万人を突破している。
当時の報道では、「どこまで記録を伸ばすか」が注目されたが、結果的には失速して235万人止まり。
そして公開から1ヶ月後、『軍艦島』、『タクシー運転手』が続いて公開される。このあたり、映画界による現政権への忖度が感じられなくもない。
いずれにしても本作はヒットしたけれど、期待していた数字にはちと遠い…という感がある。
盛り上がりに欠けた理由はなんだろう?
様々な理由があると思うけど、朴烈と金子文子が検束されてからのシーンがとにかく長い。公判までの間、二人の思想を「これでもか!」と押しつけられている気がした。正直、ちょっと嫌気がさした。
といっても、先に金子文子の人生を知った上で作品を見ると、全然違う!
金子文子の本を読んで衝撃を受けた―
この映画には金子文子という女性の壮絶な人生が描かれていないが、19歳の彼女はそれまで絶望的な人生を歩んできた。
幼少期も朝鮮半島に渡っていた時期も、この女性は地獄のような毎日を生き、「死んだほうが楽」とさえ思っている。
金子文子という女性の目に映っていた世界、それは例えるなら、貧しき者がどんなに頑張っても幸せにはなれない“ヘル朝鮮”そのものだった。
映画のセリフの中で文子が過去についてザックリ語っているけど、そんな簡単なもんじゃない。
ここで金子文子という女性がどれほどの地獄を味わったかはとても書けないけど、それを知った上で作品を見るとなぜ彼女が朴烈の「犬ころ」という詩に共感したのか。社会に反感を抱きながらも朴烈とは同志になれたのか、すべてがストンと落ちる。
特赦による減刑を告げられたときの怒りも理解できた。
映画は、朴烈と金子文子の出逢いから始まっているので、これは朴烈についても同じことがいえる。
二人が生き抜いてきた過去なくして、獄中での闘いなど到底理解できない。
というわけで、朴烈と金子文子という人物を描きながら、中途半端にしか描けていないことがとても残念だったw
普通に映画だけ見ると、二人のキャラクターそのものにさほど共感できず「こんな過激な夫婦が近所に住んでたら本気でイヤかも」と思う程度に終わりそう。
もう一つ、朴烈演じるイ・ジェフンのセリフの多くが日本語というのもツラかった。聞きづらさは否めず、これには字幕をつけてほしい。
オススメ度 ★★☆☆☆
二十世紀(上) (ちくま文庫) 理解しがたい出来事も含め、すべての積み重ねが“歴史”。 |